【成功事例10選】従業員満足度(ES)を10%向上させた企業の取り組み

企業にとって従業員満足度の向上は、業績向上や優秀な人材の定着に直結する重要な要素です。従業員が職場環境や待遇、仕事内容に満足していることは、モチベーションや生産性の向上、さらには顧客満足度の向上にも繋がります。
本記事では、従業員満足度を向上させた10社の成功事例を紹介します。それぞれの企業がどのような取り組みを行い、具体的にどのようにして10%の向上を達成したのかを詳しく解説します。人事部マネージャーをはじめとする読者の皆様が、実践可能なアイデアを見つけ、貴社の従業員満足度向上に役立てていただける内容となっています。
従業員満足度とは?

従業員満足度とは、職場環境や待遇、仕事内容に対する従業員の満足感を測る指標です。
従業員満足度は、従業員の仕事に対する態度や行動に直接的な影響を与え、企業全体の生産性や業績にも大きく関わります。
従業員満足度は主に動機付け要因と衛生要因の二つに分けられます。
動機付け要因:従業員のやりがいや成長に直結する要素。
衛生要因:従業員が職場で快適に働くための基本的な要素。
例えば、厚生労働省ではワーク・エンゲイジメント(従業員が仕事に対してポジティブで充実している心理状態)と定着率・離職率について以下の様に記載しております。
・新入社員の定着率(入社3年後)
ワーク・エンゲイジメント・スコアが高いほど、新入社員の定着率が高い傾向があります。特にスコアが4以上の場合、定着率が顕著に上昇しています。
・従業員の離職率
ワーク・エンゲイジメント・スコアが高いほど、従業員の離職率が低下する傾向があります。スコアが4以上の場合、離職率の低下が顕著です。
従業員満足度と従業員エンゲージメントの違い
従業員満足度と従業員エンゲージメントは、企業が人材を活用する上で重要な指標ですが、両者には明確な違いがあります。
従業員満足度は主に職場環境や待遇、仕事内容に対する従業員の満足感を測るものであり、具体的には給与、福利厚生、人間関係などの「衛生要因」に焦点を当てています。
従業員エンゲージメントは、従業員が企業のビジョンや目標に対してどれだけ熱意を持ち、自己の役割に意欲的に取り組んでいるかを示す指標であり、達成感や承認・評価などの「動機付け要因」が中心となります。
これら二つの概念が企業にもたらす影響にも違いがあります。従業員満足度が高いと、離職率の低下や職場の安定化が期待できる一方、エンゲージメントが高いと、従業員のパフォーマンス向上やイノベーションの促進といった、より積極的な成果が見込まれます。
誤解されやすい点として、満足度が高ければエンゲージメントも自然と高まると考える企業もありますが、実際には両者は独立した要素であり、別々にアプローチする必要があります。
従業員満足度向上によるメリット
従業員満足度が高まることで、企業には多くの具体的なメリットがもたらされます。まず、生産性の向上が挙げられます。満足度の高い従業員は、業務に対するモチベーションが高く、効率的かつ積極的に業務に取り組むため、結果として生産性が向上します。
また、離職率の低下も重要なメリットの一つです。
これらのメリットは、企業の業績改善や顧客満足度の向上にも直結します。満足度の高い従業員は、顧客とのコミュニケーションにおいても積極的かつ誠実に対応するため、顧客満足度の向上に寄与します。
従業員満足度調査の実施方法
従業員満足度調査は、企業が従業員の意見や感情を把握し、職場環境の改善や組織の成長を図るための重要なツールです。調査を通じて得られたデータは、従業員の満足度やエンゲージメントを高めるための具体的な施策を立案する基盤となります。
目的は、従業員が職場で感じている満足度や課題を明確にすることです。調査の重要性は、従業員の声を直接反映することで、組織全体のパフォーマンス向上や離職率の低減につながる点にあります。
次に、効果的な従業員満足度調査の実施手順について説明します。
①アンケートの設計
具体的かつ関連性の高い質問を作成する。
選択式と自由回答式のバランスを取る。
短時間で回答できるよう、質問数を適切に設定する。
②サンプルの選定
全従業員からランダムにサンプルを抽出する。
各部署や職種から均等に参加者を選ぶことで、代表性を確保する。
③回答の収集
オンラインサーベイツール(例:SurveyMonkey、Googleフォーム)を使用する。
匿名性を保つことで、率直な意見を引き出す。
調査期間を設け、期限内に回答を促すリマインダーを送信する。
④データの整理と分析
定量データは統計ツール(例:Excel、SPSS)を用いて分析する。
定性データはテーマごとに分類し、傾向を把握する。
⑤改善策の立案
分析結果に基づき、優先順位の高い課題を特定する。
具体的なアクションプランを策定し、実行可能な施策を決定する。
⑥フィードバックの共有と実行
調査結果と今後の改善策を従業員に共有する。
定期的に進捗を確認し、必要に応じて施策を調整する。
注意点
調査の頻度を定期的に設定し、継続的な改善をしましょう。
専門的なサーベイツールを活用し、データの精度を高めましょう。
従業員のプライバシーを尊重し、信頼関係を築きましょう。
従業員満足度を向上させた企業の成功事例10選

柔軟な働き方を導入した企業
①サイボウズ株式会社の働き方改革
サイボウズ株式会社は、働き方改革に積極的に取り組み、従業員満足度の向上を実現しました。まず、柔軟な勤務時間を導入し、従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方を可能にしました。
次に、リモートワークの導入を推進し、オフィスに縛られない柔軟な勤務環境を提供しました。従業員は自宅やカフェなど、自由な場所で業務を行うことができるようになり、通勤時間の削減や集中できる環境の整備が実現しました。
さらに、サイボウズ株式会社はワークライフバランスの推進にも力を入れています。具体的には、年間を通じて有給休暇の取得を奨励し、従業員がリフレッシュできる環境を整備しています。
これらの改革の結果、サイボウズ株式会社では従業員満足度が前年比で15%向上し、社内の生産性も20%増加しました。従業員からは「柔軟な勤務時間のおかげで家庭との両立がしやすくなった」「リモートワーク制度が導入されてから、仕事への集中力が高まった」といった声が寄せられています。
②株式会社キュービックのリモートワーク制度
株式会社キュービックが導入したリモートワーク制度は、現代の働き方改革を体現する取り組みです。この制度では、在宅勤務の推奨を基本とし、従業員が自宅でも快適に業務を遂行できるよう、必要な設備の提供を行っています。
また、遠隔地でも円滑なコミュニケーションを維持するために、最新のコミュニケーションツールを導入しています。これには、ビデオ会議システムやチャットアプリケーションが含まれ、チーム間の連携を強化し、プロジェクトの進行をスムーズに行うことが可能です。
リモートワーク制度の導入後、従業員からは、「柔軟な働き方が可能になり、ワークライフバランスが改善された」との声が多く寄せられており、会社全体のモチベーションの向上にも寄与しています。
③株式会社オリエンタルランドのシフト調整施策
株式会社オリエンタルランドは、従業員のワークライフバランスと満足度を高めるために、革新的なシフト調整施策を導入しました。
労働時間の柔軟化により、従業員は自身のライフスタイルや家庭の状況に合わせて勤務時間を調整できるようになりました。例えば、フレックスタイム制度の導入により、コアタイムを設けつつも出退勤時間を柔軟に設定することが可能です。
また、希望に応じたシフト調整も積極的に行われています。従業員は事前にシフト希望を提出し、可能な限り希望を反映したシフトが組まれるように配慮されています。
休暇取得の促進も重要な施策の一つです。オリエンタルランドでは、有給休暇の取得率を高めるために、定期的なリマインダーや休暇取得を奨励するキャンペーンを実施しています。
株式会社オリエンタルランドのシフト調整施策は、従業員一人ひとりのニーズに応えることで、全体としての生産性向上と職場の満足度向上に成功した好例と言えます。
福利厚生を充実させた企業
④株式会社グリーンフィールドの会社負担の交流会
株式会社グリーンフィールドではコミュニケーションの活性化を目的に、会社負担での交流会を実施しています。従業員は無料で参加することで、外食費等の負担を軽減し、従業員同士のコミュニケーションの場として利用しています。
参考:株式会社グリーンフィールド福利厚生⑤千葉銀行従業員組合の社内&オンラインでヨガ体験
千葉銀行従業員組合では従業員の満足度向上と健康増進のために、社内とオンライン同時開催でヨガ体験を行いました。ヨガはホットヨガスタジオLAVA法人向けサービスの健康増進プログラムを利用しました。レッスン内容は経験豊富なインストラクターにお任せできるので、少ない工数での実施が可能となりました。
社内コミュニケーションを活性化した企業
⑥株式会社ラキールの全社集会の実施
株式会社ラキールの約400名の従業員が参加した集会が行われました。前半では事業実績や目標、各事業部の戦略が示され、後半では長年勤続表彰や「LaKeel Award」などの社内表彰式が行われました。
社員への事後アンケートでは多くの社員がエンゲージメントやモチベーションの向上を感じたと回答しました。
参考:ラキール、全社集会「Lighthouse Meeting 2025」開催⑦クックパッド株式会社の流しそうめんランチ
クックパッド株式会社では、毎年夏の終わりに流しそうめんランチを実施しています。このイベントは社員同士の交流を促進し、楽しい時間を共有するためのものです。
そうめんをすすりながら、お互いの近況や夏休みの予定を話すなど、ランチタイムの何気ない会話が仕事の質を向上させる大切な時間となっています。
従業員エンゲージメントを高めた企業
⑧リクルートホールディングスの企業ビジョンを共有
リクルートホールディングスは、経営層が現場を回るタウンミーティングや浸透研修を実施したり、現場からビジョンにつながる事例を収集・共有し、称賛する仕組みを作り上げたりしてエンゲージメントを高めています。
参考:リクルート流!従業員を動かすビジョンの共有・行動化⑨株式会社ローソンのローソン・チャレンジ大賞
ローソン・チャレンジ大賞は、現場で生まれた創意工夫や業務改善、新たなアイデアを実行した取り組みを集め、発表・表彰する社内表彰制度です。
毎年1回開催され全国から応募された取り組みの中から選定された数件が全社総会の場で発表され、最優秀賞1件、2位2件、SDGs推進特別賞1件、業務改革賞3件、人財開発賞2件などが表彰されます。
⑩株式会社LIXILのキャリア申告制度
株式会社LIXILではキャリア申告制度という、従業員が「将来的にチャレンジしたい仕事」について年1回申告する制度があります。自身のキャリアを主体的に考える機会を提供することで、従業員の意欲がどこにあるかを企業は把握し、人事部門が申告内容をもとに異動や育成計画を検討します。また、社内公募制度(Job Posting)と連携し、希望に沿ったポジションへのチャレンジ機会を提供することもあります。
参考:株式会社LIXILキャリアサポート従業員満足度向上のための具体的なステップ

施策の立案と実行
従業員への調査結果に基づき、具体的な改善施策を立案しましょう。
①課題の特定と優先順位付け
主要な問題点をリストアップし、優先順位を決定します。
②具体的な施策の策定
コミュニケーションの改善、福利厚生の充実、キャリア開発プログラムの導入などを具体化します。
③実行計画の作成
必要な資源、責任者、スケジュールを明確にし、実行計画を策定します。
④関係者への周知
計画の内容と目的を全従業員や関連部門に共有し、協力を得ます。
⑤効果測定
施策実施後に再度従業員満足度調査を行い、改善の成果を評価します。
⑥フィードバックの収集
定期的な面談やフォーカスグループを通じて、従業員から具体的な意見を収集します。
⑦継続的な改善サイクルの確立
収集したデータを基に施策を見直し、新たな改善策を導入します。
まとめ:企業が目指すべき方向性

従業員満足度が高いと、従業員のモチベーションやパフォーマンスが向上し、顧客へのサービス品質も向上します。これにより、企業全体の競争力も強化されます。
取り組めることから始めて、従業員満足度を向上させ、人員不足解消への一歩になる事を願っています。